「ほめる」ということ 外食産業などでは、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」などの基本的な言葉 は条件反射として瞬間的に出てくるようになるまで研修する。その言葉を発すべき状況で、 一瞬の「間」ができてしまうと、その時点で取り繕ったようになり、「真実味」が薄れてし まう。褒め言葉も同じ。必要なところで、瞬間的に出てこなければ白々しいものとなる。そ のため、瞬発的に出てくるよう心がけて準備をしておく事が必要。 なぜ相手をほめられないか 1. ほめ方を知らない(語彙が少ない、瞬間的に出てこない→必要な時に使えない) 2. ほめられると居心地が良くない(自分自身がほめられ下手。完璧主義) 3. 自分のことで精いっぱい(ほめる点を見つけるための観察の時間と余裕がない) 4. ほめると相手がつけ上がると思っている(仕事は辛いものであるべきと思っていない か) 5. 相手より優位に立ちたいと思っている(部下にライバル意識を持つ了見の狭さ。自分を 超える部かを育ててこそ名上司) 6. 被害者意識を持っている(自分は評価されていない、という意識→だから他人もほめな い。自分がほめられるためにまず自分が他人をほめる) 7. 個人的な好き嫌いに影響されている(公平に) ほめ上手になると得をする理由 1. 理解されている実感を相手に与えられる(自分への信頼や尊敬が得られる) 2. 相手の自己信頼、自信アップ 3. 組織の雰囲気が明るくなる 4. モチベーションがあがる(ほめてくれる人の顔に泥を塗ろうとは思わない、ほめられた 所はもっと活かそうとする) 5. ミスが減る(未然につかまえられる) 6. ほめる側のエネルギーが上がる(言霊。ほめている人はまろやかないい顔になる。ほめ ることは自分のエネルギーの充電) 効果的にほめるための基本原則(6つの原則と4つの心がけ) 正しいほめ言葉の6原則 1. 事実を、細かく具体的にほめる 2. 相手にあわせてほめる (口だけではほめられない。耳と目と心でほめる。「聴く」) 3. タイミング良くほめる 4. 先手を取ってほめる 5. 心をこめてほめる 6. おだてず媚びずにほめる ほめ上手になるための4つの心がけ 1. ほめる要素を探す 2. ほめ方のレパートリーを増やす 3. 力加減をコントロールする(ほめるのが下手な人は0か100。ほめるかほめないかし かない。だからぎこちない。) 4. あきらめずに実践する(生まれながらのほめ上手はいない。最初はぎこちなくても、だ んだん周りの認識も変わる)
岡田 唯男/Tadao Okada, MD, MPH Center for Faculty Development, Primary Care Institute
ほめる10則(リストのチカラより) 1. 相手の長所や美点に目を向ける 2. ほめ言葉に実感を込める 3. 具体的にほめる 4. うまくいったその瞬間にほめる 5. 当たり前のことを実行している人をほめる 6. 相手の欠点をほめる(☆) 7. 結果だけでなく、プロセスもほめる 8. 第三者を通して間接的にほめる 9. 電話やメモを使ってほめる 10. ほめた後に、次の目標を示す ほめ言葉のカテゴリー(分類) 言動や行動パターンをほめる 見た目や外見をほめる 知的能力の高さをほめる 優れた人間性・人間関係能力をほめる 期待と感謝の気持ちでほめる 相手別戦略 1. 成績が悪い部下をほめる 強み・長所を具体的にほめる もっとも生き生きする瞬間を探す ほめようがない時は可能性をほめる 2. 成績が常時トップの人をほめる 一番の人ほどほめられていない 成績トップの人をほめる効果は絶大 さらなる可能性に気づかせるほめ方を プロセスや努力にフォーカスする 「運がいいね」より「強運」だね 公の場でほめるか、一対一でほめるか検討 3. 年上の部下をほめる 敬意を持って接することが基本 些細なことでも相談して相手を立てる 要望や意見はほめてから伝える 経験、趣味、家族をほめる 「若い」と言われて喜ぶ人ばかりではない 4. 年下の上司をほめる 年齢を意識しないことが鉄則 事実をほめる 意識して役職名を付ける 5. 若手社員をほめる 相手を知ることが、ほめるための下地 プロセスに注目し、小さな進歩をほめる ほめ上手は叱り上手 未来より現状をほめるのが若者向き 「個性的」は没個性というメッセージ(具体的に)
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岡田 唯男/Tadao Okada, MD, MPH Center for Faculty Development, Primary Care Institute
6. 非社員(派遣、契約、パート)をほめる 言葉かけで相手の不満を解消 ライフスタイルにもほめるヒントが隠されている 「もし、頑張れば」を安易に使わない(正社員や昇進を望んでいるとは限ら ない) 7. 成功している年長者(社長、経営者など)をほめる 武勇伝、自慢話を聞き出す 相手が尊敬する人物をほめる 経営者をほめる時は本棚に注目 8. 職人気質のスペシャリスト(エンジニア、技能職など)をほめる 直接的なほめ言葉は警戒されることも(素人に俺のすごさが分かるか!) 感嘆や感心の言葉で敬意を表す 詰問にならないように質問する 9. ムードメーカーの人をほめる 具体的なほめ言葉は逆効果(明るくなった、雰囲気が良くなったなどを使 う) 派手な表現、擬音語を使ってほめる 事実に基づき、心を込めて 10. 身近にいる人(家族、両親、友達)をほめる 「あなたは大事な存在だ」というメッセージを つながり感をいだかせるような言動を 第三者というクッションボールを活用 言葉を出す直前にもう一度確認 受け手ががっかりするのではなく、「また頑張ろう」という気持ちになれるか 「与え手の話を聞いて良かった」という気持ちになれるか 与え手にとってはたった1回の指摘でも新人にとってはいろいろな人から1日5回「あ なたは∼できない」と言われると最初の半年で600回「あなたは∼できない」と言わ れることになる カッと来たとき、口を開く前に思い出すべき「三つの門」(リストのチカラ) ∼昔の賢人達は、発しようとしている言葉が三つの門をくぐった時初めて、その言葉を口に した∼ 1. これらの言葉は真実か? 2. これらの言葉は必要か? 3. これらの言葉に思いやりはあるか?
しかる5則 (リストのチカラ) 1. わびる気持ちで叱る(☆) ̶ 偉そうな態度、言い方をしない。自分の指導や監 督の方法にも問題があるかもしれないのだから。 2. 受け入れ体制をつくる ̶ 最初にほめるなど、苦い薬を飲みやすく 3. 「明るく」「短く」しかる ̶ ねちねち叱らない、一度にあれもこれも叱らない 4. 何を叱るか事前に明確に ̶ その場で感情的にしからない。どういう場合に叱る のか事前に基準を明確にし、伝えておく 5. 良く聞いてからしかる ̶ やむを得ない事情があるかも知れないので、事実を確 かめた上で叱る
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岡田 唯男/Tadao Okada, MD, MPH Center for Faculty Development, Primary Care Institute
行動科学的視点から feedback の3要素 種類; タイミング: 可能性:
Positive (P) 即時(S) 確か(T)
vs vs vs
Negative (N) 後 (A) 不確実(F)
後に同じ行動が長期的に繰り返される可能性が最も高いものが PST (例:年に2回のボーナスは P,A,F であり、行動への影響はあまり望めない)
参考文献 ほめ言葉ハンドブック 2007
本間 正人 ・祐川 京子
PHP 研究所
http://mediamarker.net/u/familydoc/?asin=4569659233 リストのチカラ
堀内浩二
ゴマブックス
2008
http://mediamarker.net/u/familydoc/?asin=4777108805 短期間で組織が変わる
行動科学マネジメント
石田淳
ダイヤモンド社 2007
http://mediamarker.net/u/familydoc/?asin=4478300755
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