JIS A: Biwa & Heike 9/25/08 び わ ほ う し
名前:_________________
へいけものがたり
この琵琶法師は平家物語のどこを歌っているでしょうか。歌っているところを見 つけて、その文書の下に線を書きなさい。 (一) あ
わ
さ ぬ き
へ い け
そむ
げ ん じ
ま
もの
みね
さるほどに、 阿波・ 讃岐に 平家を 背いて、 源氏を 待ちける 者ども、あそこの 峰、ここの ほら
じゅうし
ご
き
にじゅうき
づ
まい
ほうがん
さんびゃくよき
洞より、 十 四、 五騎、 二十騎、うち 連れ 参りければ、 判 官ほどなく 三 百 騎 にぞなりにけ き ょ う
ひ
ぐ
しょうぶ
けっ
ひ
しりぞ
おき
かた
る。「 今日は 日暮れぬ。 勝 負を 決すべからず」とて、 引き 退 くところに、 沖の 方より じんじょう
かざり
こ ぶ ねいっそう
みぎわ
む
いそ
しち
はちだん
尋 常 に 飾 つたる 小舟 一 艘、 汀 へ 向いてこぎ寄せけり。 磯へ 七、 八 段ばかりになりしか ふね
よこ
み
ふね
うち
よ わ いじ ゅ う は ち
ば、 舟を 横さまになす。「あれはいかに」と 見るところに、 舟の 内より 齢 十 八 ばかりな にょうぼう
ゆう
うつく
やなぎ
ごころも
べに
はかま き
みなべに
おうぎ
ひ の で
る 女 房 の、まことに 優に 美 しきが、 柳 の 五 衣に 紅の 袴 着て、 皆 紅の 扇 の 日出だした ふね
た
くだ
む
まねき
るを、 舟のせがいにはさみ 立てて、 陸へ 向いてぞ 招 いたる。 はんがん
ごとうひょうえじつもと
め
い
こう
判 官、 後藤兵衛実基を 召して、「あれはいかに」とのたまへば、「 射よとにこそ 候ふめ たいしょう
やおもて
すす
けいせい
ご ら ん
て
い
お
れ。ただし 大 将 矢 面に 進んで 傾 城を 御覧ぜば、 手だれにねらうて 射落とせとのはかりこ おぼ
こう
こう
おうぎ
い
こう
もう
い
じん
とと 覚え 候ふ。さも 候へ、 扇 をば 射させらるべうや 候ふらん」と 申す。「 射つべき 仁は お か た
だれ
じょうず
こう
なか
しもつけのくに
じゅうにん
御方に 誰かある」とのたまへば、「 上 手どもいくらも 候ふ 中に、 下 野 国 の 住 人 、 な す た ろ う す け た か
こ
よいちむなだか
こひょう
こう
て
き
こう
しょうこ
那須太郎資高が 子に、 与一宗高こそ 小 兵で 候へども、 手利きで 候へ」。*「 証 拠はいかに」 どり
あらそ
みっ
ふた
かなら
い
お
もの
こう
とのたまへば、「かけ 鳥なんどを 争 うて、 三つに 二つは 必 ず 射落とす 者で 候ふ」。「さ め
め
らば 召せ」とて 召されたり。 (二) よ い ち
にじゅう
をのこ
かち
あ か じ
にしき
おほくび
はたそで
与一、そのころはいまだ 二 十ばかりの 男 なり。 褐に、 赤地の 錦 をもつて、 大 領、 端 袖 ひたたれ
もえぎおどし
よろい き
あししろ
た
ち
き り ふ
や
ひ
いろへたる 直 垂に、 萌 黄 縅の 鎧 着て、 足 白の 太刀をはき、 切斑の 矢の、その 日のいくさ い
しょうしょうざん
あたまだか
お
うすぎりふ
たか
は
め
に 射て 少 々 残 つたりけるを、 頭 高 に 負ひなし、 薄切斑に 鷹の 羽はぎまぜたるぬた 目の かぶら
そう
しげどう
ゆみわき
こう
ぬ
たか
はんがん
まえ
鏑 をぞさし 添へたる、 重 籐の 弓 脇にはさみ、 甲をば 脱ぎ、 高ひもにかけ、 判 官の 前に かしこ
畏 まる。 むなだか
おうぎ
な か い
へ い け
けんぶつ
よ い ち
い
もう
「いかに 宗 高、あの 扇 のまん 中射て、 平家に 見 物せさせよかし」。 与一、 畏まつて 申し い
こう
ふじょう
こう
い そ ん
こう
なが
み か た
おんきず
こう
けるは、「 射おほせ 候はんことは 不 定に 候ふ。 射損じ 候ひなば、 長き 御方の 御 疵にて 候ふ い ち じ ょ うつ か ま つ
じん
おお
こう
もう
はんがんおお
いか
べし。 一 定 仕 らんずる 仁に 仰せつけらるべうや 候ふらん」と 申す。 判 官 大きに 怒つて、 かまくら
たて
さいごく
との
よしつね
めい
そむ
すこ
し さ い
ぞん
「 鎌 倉を 立つて 西 国へおもむかん 殿ばらは、 義 経が 命を 背くべからず。 少しも 子細を 存ぜ ひと
き
ん 人は、とうとうこれより 帰らるべし」とぞのたまひける。 よ い ち
かさ
じ
あ
おも
し
こう
ごじょう
こう
与一、 重ねて 辞せば 悪しかりなんとや 思ひけん、「はずれんは 知り 候はず、 御 諚で 候へ
み こ う
おんまえ
だ
くろ
うま
ふとし
ば、つかまつてこそ 見候はめ」とて、 御 前をまかり 立ち、 黒き 馬の 太 うたくましいに こ ぶ さ
しりがい
くら お
じょう
ゆ み と
なお
た づ な
小房の 鞦 かけ、まろぼやすつたる 鞍 置いてぞ 乗 つたりける。 弓取り 直し、 手綱かいく みぎわ
む
あゆ
お か た
うし
み そ う
り、 汀 へ 向いて 歩ませければ、 御方のつはものども、 後ろをはるかに 見送つて、「この わかもの
いってい
つかまつ
こう
おぼ
こう
もう
はんがん
たの
み
若 者、 一 定 仕 り 候ひぬと 覚え 候ふ」と 申しければ、 判 官も 頼もしげにぞ 見たまひける。 (continued on the back) (三) や
すこ
とおし
うみ
いつたん
い
おうぎ
しちだん
矢ごろ 少し 遠 かりければ、 海へ 一 段ばかりうち 入れたれども、なほ 扇 のあはひ 七 段ば み
にがつじゅうはちにち
とり
こく
かりはあるらんとこそ 見えたりけれ。ころは 二 月 十 八 日の、 酉の 刻ばかりのことなれば、 きたかぜはげ
い そ う
なみ
たか
ふね
ゆ
あ
ゆ
す
ただよ
おうぎ
くし
をりふし 北 風 激しくて、 磯打つ 波も 高かりけり。 舟は 揺り 上げ 揺り 据ゑ 漂 へば、 扇 も 串 さだ
おき
へ い け
ふね
いちめん
なら
けんぶつ
くが
げ ん じ
に 定まらずひらめいたり。 沖には 平家、 船を 一 面に 並べて 見 物す。 陸には 源氏、くつばみ なら
み
は
を 並べてこれを 見る。いづれもいづれも 晴れならずといふことぞなき。 よ い ち め
なむはちまんだいぼさつ
くに
しんめい
にっこうのごんげん
うつのみや
な
す
与一目をふさいで、「 南無八幡大菩薩、わが 国の 神 明、 日 光 権 現 、 宇都宮、 那須の ゆせんだいみょうじん
ねがい
おうぎ
な か い
た
い そ ん
湯 泉 大 明 神、 願 はくはあの 扇 のまん 中射させて 賜ばせたまへ。これを 射損ずるものなら ゆ み き
お
じ が い
ひと
ふたた
おもて
むかい
いちどほん
ば、 弓切り 折り 自害して、 人に 再 び 面 を 向 かふべからず。いま 一度本国へ迎へんとお み ひ ら
かぜ
すこ
ぼし召さば、この矢はづさせたまふな」と心の内に祈念して、目を 見開いたれば、 風も 少 ふ
よわ
おうぎ
い
よ い ち
かぶら
とり
し 吹き 弱り、 扇 も 射よげにぞなつたりける。 与一 鏑 を 取つてつがひ、よつぴいてひや はな
こひょう
じゅうにそめ
いっすん
い
い き り
うど 放つ。 小 兵といふぢやう、 十 二 束ぎは 一 寸ばかりを 射て、ひいふつとぞ 射切つたる。 かぶら
うみ
はい
おうぎ
そら
あが
こ く う
はるかぜ
いち
鏑 は 海へ 入りければ、 扇 は 空へぞ 上りける。しばしは 虚空にひらめきけるが、 春 風に 一 に
うみ
さん
せぎしつ
てる
みなぐれなゐ
おうぎ
もみ 二もみもまれて、 海へさつとぞ 散つたりける。 夕 日の 輝いたるに、 皆 紅 の 扇 の ひ の で
しらなみ
うえ
ただよ
うき
しず
ゆ
おき
へ い け
ふね
日出だしたるが、 白 波の 上に 漂 ひ、 浮きぬ 沈みぬ 揺られければ、 沖には 平家、 船ばたを かん
くが
げ ん じ
えびら
たたいて 感じたり。 陸には 源氏、 箙 をたたいてどよめきけり。