研究計画書

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研究計画書 研究テーマ;大学経営における地域連携の意義

1. 研究の背景 少子高齢化の中で、地方の小規模私立大学は危機を迎えつつある。全国的な進学率は 年々高まりを見せているが、東京や京都・大阪をはじめとする都市部の大規模大学への 地方の受験生の流入傾向に拍車がかかっており、地方の私立大学は、そこにとどまる受 験生の奪い合いといった熾烈な争奪戦が繰り広げられていると言っても過言ではない。 私が在籍する大学の所在する長崎県を例にとって見れば、平成 20 年度の長崎県の大 学進学者のうち、九州域の私立大学へ進学した高校生は 65%強、そのうち地元の私立大 学へ入学したものは 30%弱ばかりである。ほとんどの大学で入学定員の充足率が 100% を下回っている状況である。 文部科学省や日本私立学校振興・共済事業団の調査結果でも、平成 20 年度の入学定員 割れ大学は全体の 47.1%に上り、入学定員規模が小さければ小さいほど定員割れの割合 が高くなっている。こうした定員割れは、私立大学の財政にも影響が現れており、特に 学生数 1,000 人規模の学校では帰属収支差額比率が平均してマイナス 11.4%となってお り、地方の中小規模の私立大学は経営的に危機を迎えつつある。この状況を打開するた めの方策のひとつには、従来のいわゆる 18 歳人口とは別のマーケットを開拓すること がいわれている。 そのことに関して、日本の大学における社会人教育と地域貢献に関する研究は、地域 の生涯学習拠点としての高等教育機関の役割と言うテーマ設定で社会教育学領域の研 究者を中心に議論されてきた。特に新たなマーケットとしての社会人教育と言う視点で、 地域連携による社会貢献型のプログラムの可能性を論じたものも少なくない。 日本における社会人教育においては、専門学校等の教育機関や民間団体による各種セ ミナーが社会人の多様な学習ニーズにフレキシブルに対応してきたと言ってよく、大学 における社会人学生が占める割合はわずか 2.7%にとどまっており、学士課程の社会人 選抜入学者数は近年減少傾向にある。その要因としては、4 年間又は 2 年間の修学期間 と卒業要件単位という修了要件と社会人の生活環境とのミスマッチ、学位取得によって より有利な職種や職場を選択できる労働市場が未成熟であることが上げられている。 社会人教育のモデルを大別して、「自己投資型」「消費型」「社会貢献型」の三つに区 分するならば、日本の大学における社会人の主な受け入れ形態の特徴としては、依然と して公開講座等のいわゆるカルチャーセンター型の「消費型」の生涯学習プログラムが

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多いとされる。また専門学校との提携による特定の資格取得のための「自己投資型」プ ログラムが増加傾向にあるが、このモデルが日本の地域社会において本格的なマーケッ トとして発達するには、労働市場の流動化をはじめとする社会全体の構造的な転換が必 要となるであろう。現在、日本の大学における社会人教育のトレンドは、第三の区分で ある「社会貢献型」モデルにあるといって良いのではないだろうか。

2. 何を明らかにするか 中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」 (2005 年)において、社会貢献は、 教育と研究に次ぐ大学の「第三の使命」とされ、都市再生本部においても「大学と地域 の連携協働による都市再生の推進」が第十次都市再生プロジェクト(2005 年)として 決定された。こうした政策を推進するべく様々な施策が進行中である。 内閣官房都市再生本部事務局の調べでは、大学と自治体との協定締結が積極的に進め られ、その締結数は 2007 年 4 月時点で実に 542 件に上っている。と同時に、大学と連 携を図る上での自治体側が認識している課題として、「地域と大学との連携体制・連携 内容」(・協定を締結した大学が近隣にないため、継続的・日常な連携が困難 的な連携に必要な窓口の未整備

・組織

等)、「行政・住民・大学とのギャップ」(・大学が目

指す地域貢献や事業内容と自治体が大学に期待する貢献内容にギャップ ・まちづくり の考え方に関する大学と住民とのギャップ

等)が多くあげられている。また、地域連

携に要する予算の負担や財源の問題も上げられている。 これらの課題は、大学が「社会貢献型」モデルとして社会人教育を展開するにあたっ ても解決しなければならない課題といってよいだろう。 そこで、本研究は、少子高齢化と地域間格差が進む社会経済環境の中で、経営的危機 を迎えつつある地方の小規模大学の生き残り戦略として、社会人教育をターゲットとし た地域連携のあり方とそれを可能にするマネジメントシステムを検討することを目的 とする。そして、地方の小規模私立大学の今後の生き残り戦略の一つの方向性を示すと ともに、大学と地域の双方が発展するような地域連携モデルを提示したい。 そのために、以下の点を順次明らかにしてく予定である。 ① 現在の社会人教育のマーケットを明らかにするとともに、政府によって最近位置 づけられたばかりの履修証明制度やジョブカードを含め、将来的なマーケットの 拡大の可能性について ② 持続可能なコンパクトシティとしての地域経営が求められている地方の地域社 会にあって、今後の大学はどのような地域連携が可能か、地域の課題=ニーズの 把握方法、組織的な連携に必要な方策を含めて、明らかにする。 ③ 大学の社会貢献は、教育と研究に次ぐ大学の第三の使命とされているが、使命遂

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行の結果、具体的にどのようなメリットが大学経営にもたらされるのか、どのよ うな指標により評価されるべきか、明らかにする。

3. どのように明らかにするか ① については、社会人教育のマーケットの現状と課題について、各種統計データ、 政策動向をはじめとする資料の検討と整理により明らかにしていく。 ② については、今後の地方行政の課題と方向性を政策・制度の視点から、さらに、 大学の地域貢献の先行事例、大学と地域社会の関係性を問うた研究業績等を通し て、高等教育と地域との関係性の構造や、多様な連携・交流実態を左右する要因・ 指標を明らかにする。 ③ については、実際の事例研究として、在職する大学の教育研究資源の地域貢献へ の活用状況を整理するとともに、所在する地域の課題・ニーズを把握し、今後の 地域連携の進め方について具体的な方策を策定する。この具体策の策定と併せ、 継続的かつ発展的な地域連携を可能とするには、どのような仕組みづくりが必要 か、適切なマネジメント手法について検討を行う。

4. 研究スケジュール 2009 年 4~6 月

研究計画の作成

7~12 月

資料の収集・整理

2010 年 1~4 月

資料の分析

5~9 月

論文作成

10~12 月

論文の修正

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