Beautiful Water Scenery Of Japan

  • May 2020
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水景色の日本を旅する 湧水、川、渓谷、滝、湖、そして海 ――。 水に癒されに行く  水の冷たさが心地よい季節になった。そこで今回は水景色のウェブ写真展を企画した。 今回は日本の水景色を楽しんでいただこうと思う。  この国は世界に冠たる水の国である。いたるところに名水といわれる清水が湧き、慰安 の景色をつくりだしている。荒々しいアジアモンスーンの影響をつよくうける気候風土 の中にあって、日本人の暮らしは、豊かな水の恩恵を受けてきた。主食の稲を育て、そして、 独特の文化を発達させた。

吹割の滝(ふきわれのたき)は国の天然記念物。群馬県利根町にある

群馬県片品村の菅沼の初夏の朝

岩手県岩泉町の龍泉洞の地底湖は圧倒的な透明度を誇る。水深はおよそ 100 メートル  新生の赤子は産湯を使い、悲しみや諍いは水に流し、祭祀には浄化の水を祀り、人が、さ て、この世を辞するときには末期の水を含ませる。日本人は水との深い関わりの内に一生 を過ごす民族である。水辺の風光を好み、水景色に癒されている。  今や清水が湧く全国の水口には、ポリタンクを携えた人の行列ができる。何時間もかけ て水を求め、その水によって体の健全を実感する人が少なくない。  それもこれも、豊かな水の恵みがあってのことだ。

京都・丹後半島の付け根の町、伊根町の沿岸部に見られる舟屋の連なり

いまも伝統の「鮭いぐり網漁」が行われている新潟県村上市の三面川

有明海の干潟模様  私の撮影対象は人を含めた自然界の、森羅万象。ここ 30 年間、撮影してきたフィルムの 8 割以上が、水に関わる被写体で占められている。章立てをするとすれば、名水はもとより 湖沼、河川、滝、渓谷、湿原、水田、雨、雪、霧、雲、水生昆虫・水辺の植物…さらに、これらの 章は細かく分類される。たとえば四季折々の風景、生き物の季節ごとの活動模様など、多 種多様である。  撮影しながら、どれほど水景色に癒されてきたかしれない。  沖縄西表島のマングローブ林は、花鳥風月の伝統では捉えきれない亜熱帯のダイナミ ズムがある。東洋のガラパゴスといわれるほど、生物相は多様で、眼にするものすべてが 新鮮で心が洗われる。

長崎の渓谷に乱舞する源氏蛍

沖縄・西表島のマングローブ林

熊本県菊池渓谷の初夏の風景 九州にも水の里は多い。阿蘇山系の麓の村里は名泉が数多く点在する。熊本県の旧白水村 の湧水群は、全国から泉を求めて観光客が訪れる。霧島連山も同様で、名水で名高い栗野 町と吉松町が合併して、湧水町が誕生したほどだ。希に見る水景色が堪能できる。  九州から四国は急流が多く存在し、侵食岩の風光美が特に際立つ。高知県の面河渓谷が その代表的な景観だろう。

北アルプス登山の玄関口、上高地を流れる梓川

北アルプスの雪解け水を集めて流れる梓川の清流

宮崎県高千穂峡の初夏

 長野県の北アルプス上高地は言わずと知れた梓川が高名だ。水の色がこれほど静謐な 色彩を湛えている河川を、他には知らない、といってもいいくらいだ。雪解け水の冷たさ は想像を絶し、10 秒ほども水に触れていると、手がしびれてくる。  東京にも美しい水景色がある。源氏蛍や平家蛍が飛び交う水辺も存在する。多摩川の源 流地帯は特筆するほど水が美しい。中流域や下流は自慢できるものではないが、かつては 源流地帯で見られるような清らかな水が流れていたかと思えば、近くに居住する一人と して、なんとか昔日を取り戻したいと、はかない願望を持つ。

東京の水源の一つ、多摩川の源流付近の流れ。山砂が美しい

花崗岩が侵食されてできた「寝覚の床」は長野県木曽郡上松町

福島県の湖水地方、裏磐梯の初夏の風景  湧水群で忘れてならないのが、富士山の周辺である。静岡、山梨の各地に、富士山に降っ た雨や雪が伏流して、何年もかけて湧出する泉が多い。山梨の忍野八海や静岡側には白糸 の滝が知られている。また、静岡県三島市の国道 1 号線のすぐ近くから湧き出ている大量 の清水は柿田川の清流となって早瀬を形成する。

富士山の伏流水が湧出する忍野八海の泉

忍野八海の水の色は息を呑むほど清冽

栃木県日光市山間に、眠るようにある湖「西の湖」

栃木県日光市の奥の院、湯元を象徴する湯ノ湖の風景

栃木県日光市の北端「奥日光」を流れ下る湯滝 群馬県の尾瀬はつとに知られた高層湿原である。池糖に浮島を浮遊させる水中には、オゼ サンショウウオやイワナの遊泳を見ることができる。太陽が昇る前の池糖から立ち上る 朝霧は、水景色として、多くのカメラマンを惹きつけている。

雪解け水の中で花開いた水芭蕉。群馬県側の尾瀬ケ原

富山県砺波地方に広がる散居村の風景。早苗の田んぼには立山連峰に降り注ぐ雨が引き 込まれている

朱鷺の野生復帰を助けるために作られたエサ場  山形県 1 県を貫く最上川は、源流部はもとより、河口まで急流である。中流域では「最上 川舟下り」が観光客の人気を博し、舟頭が歌う舟歌が旅情を誘う。

 青森県の八甲田山系にも、ぜひ、と勧める水景色がある。蔦沼がそれだ。新緑の季節は、 緑に抱かれて散策を楽しむことができる。そこを歩いているだけで、心身が浄化されるよ うな気分になる。秋には秋の風情があり、全山が紅葉に極まると、沼の水面に錦繍が映え て見事だ。また、そばには一軒宿の温泉「蔦温泉」があり、風呂の底から温泉が湧き出して いる。

八甲田の麓、蔦沼付近の新緑の風景

最上川の急流は山形 1 県を貫いて日本海に注ぐ

山形県にそびえる月山は古来、信仰の山。登山道に真珠のような池を見る

青森県の八甲田山系にある神秘の沼、蔦沼の初夏は緑がまばゆいほどだ

岩手県の遠野は昔日の風景が遺された民話の里  北海道の水景色の代表格は屈斜路湖や摩周湖だろう。阿寒湖もサロマ湖も、それぞれの 個性を見せてすばらしい。写真で紹介した「神の子池」は、摩周湖の伏流水が湧き出したも の、といわれている。そこは農業国の町の哲学が反映して、観光に堕しておらず、いつでも 静かにコバルトブルーの水と向き合うことができる。  今回紹介した各地の水景色は、水の国の、ほんの一部にすぎない。しかし、どれをとって も対面すれば身も心も洗われるような風景である。写真家として自信を持って勧めるこ とができる水景色だ。

北海道東部の町、清里町に湧き出る泉は、摩周湖にちなんで「神の子池」と名づけられた

北海道清里町に「桜鱒」が遡上を試みるさくら滝がある

北海道屈斜路湖の初夏。太陽光線の位置によって湖面の色が変わる

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