さらしなプロジェクト 中間進捗報告資料
2009年11月19日 千葉光の村授産園
調査結果
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調査結果:ヒアリング プロジェクト開始後、農家から都市在住者まで、30人強へアンケート・ヒアリングを実施。 さらしな地域として、地域コミュニティが形成されていない状況が浮き彫りになった。 地域に対する意識 対象者(一部)
問題・課題感
当事者意識
年齢層 地域づくりに対する意識について
農 家
行 政
NPO 都 市 在 住
農業委員(富田町) 社会福祉委員(中田町)
60歳以上
60歳以上
直売所組合長(下田町)
60歳以上
千葉県農政センター 千葉県環境生活部
60歳以上
45~60歳
千葉市経済農政局
谷当グリーンクラブ
にこにこ
30~45歳
アースデーマーケットちば
30~45歳
六本木ヒルズ 日本元気塾生
30~45歳
稲毛市在住者
30~45歳
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30~45歳
• 地域に関係する人たち全員が、地域に 問題や課題を抱えていると感じている • 一方で、当事者意識として、自分が何 かやっていかなければいけない、と若 い年齢層は考えているものの、年齢が 上になるにつれて、気持が薄らぐ。 • 当事者意識の感じ方は、地域在住年 数や地位・役職とは関係なく、千葉市 の都市部や東京・埼玉在住者の方が 高い。
45歳~60歳 持続的な地域づくりのために どのように高い当事者意識を 感じている層を地域に取り込 むかが大きな課題となってい る。
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調査結果:地域の状況 さらしな地域では、可能性がある取り組みを行っている個人・組織があるものの部落・町 単位で孤立しており、地域全体の活性化・街づくりにつながってきていない 領域
文化
職業
コミュニティ
課題
対応案
• さらしな地域の特色を生かした文化や祭りが消滅して おり、地域での楽しみがなくなってしまっている。(歴史 が浅い富田コスモス祭り程度) • 富田地区にある原田池には歴史もあり地域の貴重な 資源であるが、農業・酪農などの排水流入により水質 が悪い • 昔は蛍も見られ、昆虫も多かったらしいが、今ではどこ にいるかもわからない
• 地域の歴史や伝承を記録し、地域ならではの文化を 復活させる
• 農業者が多い地域だが、農業だけでは生計を立てて いくことは難しく、新規就農者支援も行ったが失敗に終 わった • 社会福祉(保健福祉)に関わる人も多いが、各施設と 地域のつながりが尐なく、街づくりに参画する方法が ない • ゴルフ場以外のレジャースポットは乗馬とダートコース しかなく、それに関わる職業が存在しない
• 地元産の農作物の質を向上させるとともに、新しい農 業の仕組みを整え、農業で生計を立てられるようにす る • 社会福祉と農業や地域の良い環境は連関が深く、各 施設のメリットを高めるための街づくりを行う
• 部落(町)単位で、孤立している。(市の取り組みも、各 町に運営を委ねてしまうため、地域全体での効果を発 揮できていない) • 各部落で「隣の部落は良い」という状態で、自分たちの 部落を良くしていこうという意識に欠ける。 • 以前から長く住んでいる人と、新たに住み始めた人と の間で、まったく接点がない(もしくは障害が発生して いる)。新たに住みたいと思っても、アクセスする先が 見えない(もしくはそのような人を拒んでいる)
• 部落間で協力することで、地域全体としての相乗効果 を生み出せるよう、コミュニケーションをとる仕組みを 整える • 自分たちの部落を今後どうしていきたいか?どうしな いといけないか?を危機感を持って検討する • 長く住んでいる(一般的に高齢の方)と新たに住む人 (若者)とのパワーバランスを調整する。また新たに住 む人が容易に入れるような仕組みを整える
• 原田池を地域の自然資源として復活させる(谷当地区 のため池等も復活を検討する)
• 蛍を呼び戻す活動を、地域や都市部に呼び掛け実施 する
• 都市部に近接していながら、里山が残る地域というア クセスの良さを活かしたレジャーを提供する
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調査結果:事例調査 千葉県・千葉市以外での地域づくりの事例を調査した。自然を文化的に利用する、もしく は農業・食として利用し、地域活性化に成功している例が、さらしな地区に適応できる。 事例
海 外
国 内
ファーマーズマーケット &CSA
課題
持続可能ではない農業 の普及と健康の危険
(コミュニティ・サポーテッド・アグリカルチャー)
解決策
地元の質の高い農産物を消費 者が選ぶ仕組み 地域支援農業(食品代先払)
ツリークライミング
森林や自然を愛する心 の低下
障害者も含め木登りを通じ、 森林経営を支援する
徳島県上勝町「いろどり」
過疎化と高齢化、補助金 頼みの村
地域の魅力を価値として、価 値のなかったものを売る FAX・ITによる直売システム
高知県馬路村「ゆず」
農業・地域で生活できな くなる
村をまるごと売り込む 通販による直売システム
山梨県「サラダボウル」
新規就農者支援がない 農業を継ぐ者がいない
農業の学校で就農を支援 地域と関わりながら、地域を創 る意識を育てる
千葉県御宿 「まるごとミュージアム」
町内商店の利用減尐、 観光客の減尐
ミュージアムマップによる人と 自然の新しい出合いを演出 地域資源の有効活用
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参考:事例調査
~全国先進例
山梨県中央市の「農業生産法人サラダボウル」では、NPO農業の学校を通じ、農業の研 修を行い、農業のプロとしての独立・就農の仕組みをつくっている。 NPO農業の学校の課題解決フロー(HPより) 組織名
株式会社 サラダボウル NPO農業の学校 所在地 山梨県中央市今福163番地 解決した課題 行政が行っている就農サポートは形だけで、実際に農業を 志した若者がアクセスをすると説教をされて帰される。また、 農業に転職したいと親に言うと、なぜ大学まで行かせたのに 農業かと説教をされる。そのような状況の中でも農業をやり たい若者は増えてきており、農業は他にはないほど素晴ら しい仕事なので、その夢をかなえてあげる必要があった。 解決策 NPO農業の学校を通じ、農業技術の習得から住居や資金 の確保までを、具体的に解決していく。 就農時は、サラダボウルに就職、もしくは独立して農家にな るかの形態をとる。 農業は作る場所があり、買いたい人も多く、やりたい人や情 報もいっぱいある市場であるため、こんなに恵まれている産 業はないという思想のもと、人材の育成の全国化や、カフェ &デリへの展開も進めている。
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参考:調査内容
~さらしな地域取り組み事例①
千葉市若葉区富田町での市民交流型の農園運営は、遊休化の恐れのある農地の活用 事例としては先進的であり、地域の交流人口増加に貢献している。 組織名 富田町管理運営組合(組合員数65戸)
所在地 千葉市若葉区富田町 解決した課題 農家の高齢化および若者の都市部への流出のために、地 域の農地が遊休化していっている。一方、安全安心な食を 求める都市部の市民は増加しているが、小売店での取り扱 いやトレーサビリティの向上は一部でしか進んでおらず、需 要を満たせていない。 解決策 農業体験農地では、管理運営組合の農業者が、作物栽培 の方法を指導しながら、都市部の市民と共同作業を行い、 年間15品程度の野菜等の収穫を行っている。農業の担い 手が減尐している中で、都市部の市民との連携によって、遊 休化する農地を活用する一方で、管理運営組合として事業 運営を行っていっている。
きれいに整備されている 圃場。共同作業がない日 でも千葉市から市民が手 入れ・収穫に来ている
残る課題 市民が担当する区画ごとに多品種の植え付けを行っている ため、管理運営組合側の負荷が高くなってしまっており、事 業採算を悪化させている。 また、農業体験農園(年間十五回の共同作業)だけでは、一 区画の利用料として設定する価格はあまり高くできないため 、売上の増加に限界がある。 また、地域への定着・移住への機能はない。 ©さらしなプロジェクト2009
ベテランの農業者から丁 寧に指導していただける ため、立派な農作物が収 穫できる 6
参考:調査内容
~さらしな地域取り組み事例②
下田農業ふれあい館はマンパワーおよび能力としての不足が顕著であり、当初の目的 である「都市部の市民に来てもらう」ことが難しい状況にある 組織名
人の入りがまばらで、売 れないために直売所に置 きにくる農家も尐ない
下田ふれあい交流施設管理運営組合(組合員数47戸) 所在地 千葉市若葉区下田町971番地 解決した課題(未解決) 都市部と農村部の市民交流が行われておらず、農産物の 市場価格は低い状態が続いていることで、農業の力がどん どん減退している。
解決策 地元の農産物や郷土の食を提供し、都市部の市民を施設 に来てもらい、農村部との交流の場にする。
課題 集客力が低く、他の直売所には出すが、下田には出さない 農家が存在する(売れ残り処分が大変)。結果として、地元 の農産物以外も置かざるを得ない。 農産物の質が低い、またはトレーサビリティがなく、併設の レストランも食材・料理の説明がないため、近接するJA直売 所のみに人が集まっている。
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個性的なイベントも行わ れておらず、店頭でやきそ ばが売れ残っている状態 7
参考:調査内容
~さらしな地域取り組み事例③
谷当グリーンクラブは、イベントを常時行っているものの、活動内容と都心のニーズがマ ッチしておらず、またPRも効果的でないため、集客に苦労をしている 組織名 谷当グリーンクラブ(わたしの田舎・谷当工房、Artistic Space Kaneoya) 所在地 千葉県千葉市若葉区谷当町70 解決した課題(未解決) 千葉の典型的な里山風景の残る谷当で、自然を守り、その 自然の中でのライフスタイルを楽しめれば持続可能な街づく りにつながるが、現在の社会の中では事業として存続する ことが難しく、結果として、大規模な開発が行われてしまった り、持続的でない農業が行われてしまっている。 解決策
千葉市・谷当を愛する人たちが集まり、農業(米作り)や文 化的行事を実施し、地域の価値を高める。
竹炭を焼くための窯もあり うまく活用されれば都市部 の市民に受け入れられる 要素は持っている
課題 地域の固定的なメンバーだけでは組織の年齢層があがって しまい、若者の活動への参加が減ってきている。そのため、 人材確保が難しく、積極的な活動を行う精力がない。 また、事業として収益性の確保が難しく、事業として実施で きる内容・サービスに限度が出ている。
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手入れされている林もあり、 現状はBBQなどに利用さ れている
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地域活性化プラン(案)
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地域活性化プラン発展ステップ(案) 持続可能な循環型社会へ発展していくための地域活性化プランを検討する 持続可能な 循環型社会
Step3
地域内で独立可能
地 域 と し て の 依 存 度
地域での生活を確保した のち、文化的な要素の創 造も発信できるよう地域 の価値を高めてゆく
地域の資源や風土を活か した職業の創出を図り、地 域の人(流入含む)の生活 を確保する 地域で一部 内製
外部に依存
Step2
現状 Step1 コミュニティの 方向性検討
将来に危機感を持つ都市 部の若手と協力し、地域 の方向性を検討開始する
職業創出による 生活確保
文化まで含めた 地域の発掘と創造
プラン範囲 ©さらしなプロジェクト2009
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STEP1:コミュニティの方向性検討 アースデーマーケット千葉 や直売所などで、販売だ けでなく意見の交換を行 い、活動を共にする
都市部で 当事者意識の 高い人たち
さらしな地域の 人たち
農産物
地域への要望 リアルな場
要望・知識・時 間・お金
A部落
農業者 福祉関係者 加工業者 ・・・
お金の提供 サービス 要望・知識・時 間・お金 知識の提供
B部落
バーチャルな場 加工品
時間(活動)の 提供
要望・知識・時 間・お金
C部落
物・サービス提供 通販サイトを活用した販 売とあわせ、ブログや SNSを通じた意見交換を 行い、ITを通じた新たなコ ミュニティを形成する ©さらしなプロジェクト2009
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STEP1:コミュニティの方向性検討
~具体的施策
リアルな場とバーチャルな場を整備し、地域に住んでいる人と、都市部で意識の高い人 たちをつなげる場を介して、地域づくりの方向性を一緒に検討していく 施策
内容
参考例
リアルな場の 整備
都市部の人が集まる場 所にさらしな地域の物を 持っていき、販売とあわ せて意見をいただく
アースデイマーケット にこにこ稲毛
検討中
バーチャルな場 の整備
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通販サイトを整備し都市 部の人に直接売るのと あわせ、さらしな地域の 情報を積極的に出し、コ ミュニティを形成する
ファーマーズマーケット 各通販サイト
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STEP2:職業の創出による生活の確保
都市部で 当事者意識の 高い人たち
地域へ人が入ってこられる ような入口を用意し、都市 部の人を勧誘する (相談所・ホームステイ等)
地域への流入 農産物
地域への要望
知識・時間・お金 リアルな場
新農業者 新福祉関係者
職業の 転換
新加工業者 新サービス 提供者
お金の提供 物・人・お金の 双方向の流れ 知識の提供
さらしな地域の 人たち
バーチャルな場
時間(活動)の 提供
加工品
物・サービス提供
知識・時間・お金
新たな形態での 職業を創出し、職 業の転換・人の流 入を促進する
さらに地域から都市部への物・サービス の提供は拡大し、都市部からのお金・知 識・時間の提供は増えつつも、外部から の地域への要望を選別してゆく
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STEP3:文化まで含めた地域の発掘と創造
都市部の 人たち
持続可能な循環型社会 地域の人たち
都市部の需要に引き続き 応えつつも、都市部からの 収入に頼らずとも生活でき る比率に落とす お金の提供
新農業者 新福祉関係者 お金
新加工業者
物・人・お金の 双方向の流れ
新サービス 提供者
リアルな場 リアルな場 文化的要素
バーチャルな場
物・サービス提供
バーチャルな場
生活が安定し た上で、風土 に根差した文 化を発掘そし て創造し、生 活品質を高め る
物・サービス 意識の高い複数のコミュニ ティ同士で連携していくこと で、都市部に頼らない生活 を実現する 地域への流入
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